報道の現場とカメラのいま
このブログはかつて、報道の視点から写真やカメラについて多く触れてきた。それによって中断を余儀なくされたけれど、一方で、愛読してくれる人たちもいた。
写真やカメラを扱うサイトは多いけれど、報道というきわめてニッチな分野を専門にしたものは少ない。だからこそ、このページはきわめて限定的ではあったけれど根強い需要があったのだと思う。
本来の専門は、ニュースや報道のあり方への雑観(雑感でもある)だけれど、とりあえずは報道の現場で使われる機材の近況を紹介する。今回はカメラボディについて。
この一年で特に大きく変わったことがある。写真記者が一眼レフで映像取材も行うことが当たり前になった。
現在はビデオカメラに比べるとオートフォーカスやズーミングが苦手だが、大型センサーによる映像のよさは民生用のビデオカメラとは比較にならない。この高画質を武器に、ウェブ向けに限らず協力関係にある放送局を通じてテレビニュースでも使われている。
映像取材ではキヤノンのカメラがよく使われている。同社は早くからフルハイビジョン映像の撮影機能を取り入れ、最近はドラマや映画、コマーシャルへの売り込みに力を入れている。ここ最近では、TBS系で放送されたドラマ「おじいちゃんは25歳」の撮影を全て同社の一眼レフで行ったという。
高品質の映像作品をつくるために、これまでは数千万円レベルで機材をそろえる必要があった。ところが一眼レフなら数十万円台で従来の機材と同等、場合によってはさらに高品質な作品を生み出せる。映像業界でコスト削減が進んでいることも背景だが、機材や記録メディアもコンパクトになり機動力が飛躍的に高まったことも、映像の世界で一眼レフが歓迎されている一因だ。
少し前は、画質の向上したビデオカメラがスチル写真の機能を担う、とばかり思っていたけれど、逆に一眼レフが有力な映像ツールになった。なんとも複雑な気持ち…。
さて、具体的な機材の紹介を。
現場でよく使われるキヤノンのカメラは、報道向けを念頭に造られた1DマークⅣが主力となっている。先代のマークⅢは動く被写体に対するAF性能が難点だったが、その点は完全に解消された。高感度撮影に強くなり、画素数もバランス良いレベルまで増えた。難を言えば、モニターで確認した画像が実画像よりも明るめに表示される印象が強い。モニターは初期設定より暗くしたほうがいい。
高画素の5DマークⅡと、APSーCサイズながらも高感度撮影や高速連写の性能が優れている7Dも、1Dのサブ機としてよく使われている。いずれも、ハイビジョン映像が撮影できる。
キヤノンはセンサーサイズの関係から焦点距離が長くなるため(フルサイズ機を除く)、撮影距離が遠い取材や、迫力ある写真が求められるスポーツ取材では根強い支持を集める。
ニコンは、フルサイズで扱いやすく高感度特性に一日の長があるD3sが主力となっている。
登場から3年とデジカメの世界では古株に差し掛かるD3も、基本性能の高さからまだまだ現役だ。
ライバル機より画素数が少ないけれど、報道向けには1200万画素は十分すぎる。そもそもこのレベルならパネル大の印刷でも問題ない。
高感度撮影はもはやいうまでもないけれど、暗いところでもAFが正確に合うからこそ高感度特性がアピールできることを忘れてはいけないと思う。
難を言えば、複数色の光源でホワイトバランスをオートにすると、ややイエローが目立つ傾向があるところか。
D3のセンサーを積みながらも機動力に優れたD700も支持を集める。バッテリーパックをつければD3に迫る高速連写が可能ということで、サブ機として導入する社も見られる。
現在はあまり多くないが、D300sといったDXフォーマット機を愛用する人もいる。日中に遠距離の被写体を撮るときはフルサイズ機より有利。ボディとレンズのさらなるコンパクト化が望めるDXフォーマットには期待しているので、D3程度の画質の上級機を世に出してほしい、と願っている。
かつてはニコンは、シェアでキヤノンに押され気味だったが、特に劣勢を強いられていたスポーツ取材でも現在は互角の勝負を演じている。室内や夜間の競技ではやはり定評がある。
キヤノンとニコンのどちらがいいのか、という結論は、出せない。両社ともきわめて高品質な機種を揃え、ある程度の差はあれど、誰の目にも明らかな決定的な優劣というものが存在しないからだ。
そして、これまでも繰り返していることだけれど、写真はカメラではなく人間が撮るということを忘れてはならない。性能も値段も高い機材でも見る人の心に訴えかける写真を撮れるとは限らないことは、価格コムあたりをぶらつくと分かるはず。モデルを雇うお金とレフ板があればいいポートレートや、土産屋にある絵葉書のような風景写真くらいは、エントリーモデルと中古の単焦点レンズで十分だ。
弘法も筆を選ぶとしても、良い筆を使えば弘法になれるわけではない。そして、向上心や好奇心といった気持ちこそが見る人の心を揺さぶる写真を生む。そう考える。
次回は、レンズについて紹介できたらと考えている。
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