週明け以降、年内の衆院選の可能性が一気にしぼんだ。そんな中、29日に多くの地方紙の政治面などにある記事が掲載された。非常に読み応えがあるショッキングな内容で、すべて事実だとすれば取材者はかなりの力量を持っていると感服したので、紹介する。局長賞は確実か。
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首相麻生太郎が株価底割れを受けて衆院選の年内見送りへかじを切った。大義名分は景気優先だが、選挙情勢の旗色が悪く「越年に追い込まれた」(自民党幹部)のが実情だ。ただ持久戦で勝機が訪れる保証はなく、公明党との連立体制は相互不信がむしばむ。政権失速のリスクを抱え込んだ「展望なき決戦回避」までの軌跡をたどった。=敬称略=
26日夜、東京・紀尾井町の「グランドプリンスホテル赤坂」。秘書官との食事名目でホテル内の中国料理店に姿を消した麻生は、報道陣の目をかいくぐり上階の客室を訪れた。公明党代表太田昭宏と幹事長北側一雄が待ち受けていた。首相が24、25両日の北京訪問の際、衆院の早期解散に慎重姿勢を示したことに業を煮やし、直談判しようと手ぐすね引いていた。
「一体、誰のおかげで総理になれたと思ってるんだ」。密会の部屋には早期解散を迫る二人の怒号が飛び交った。公明党は低空飛行を続けた前首相福田康夫に見切りをつけ、選挙の「顔」として麻生を押し上げる原動力の一翼を担った。すべては麻生の就任直後の“ご祝儀相場”が引けないうちに選挙を戦い、与党過半数を確保するため。支持母体の創価学会は「11月衆院選」を目指して走り続けており、簡単に「撃ち方やめ」というわけにはいかない。学会への面目は丸つぶれだ。
しかし、解散権を握る麻生は先送りの判断を告げた。「今の経済情勢を考えると、政治空白をつくることはできないでしょうが。景気、金融対策を優先させる。選挙は今じゃないんだ」
▼物別れ
ホテルでの麻生と太田らのせめぎ合いは続いた。太田は「解散するかしないか考えながら政権を運営しても中途半端になる。民意の洗礼を受けたうえで、強力な経済対策を打つべきだ」と指摘。
さらに衆院選日程について「11月30日」が有力視されてきたことを踏まえ「11月末が駄目な理由を言ってくれ。駄目なら、この時期に解散すれば勝てるんだという戦略を示してくれ」と食い下がったが、麻生は「言えない」の一点張り。
「このままでは福田と同じになってしまうぞ」。いら立つ太田は「麻生おろし」までちらつかせた。しかし約1時間続いた会談は物別れに。テーブルには、麻生が一口もつけずに冷めたコーヒーが残された。
会談には前段があった。麻生と太田は今月1日にも同じホテルでひそかに向き合った。太田は早期解散を求める立場から麻生の腹のうちを探った。だが麻生は「おたくらは、福田前政権のときは『選挙は年末・年始に』と言っていたんじゃなかったんですかねえ」と、けむに巻くだけだった。
一連の会談で公明党執行部の“麻生不信”は加速した。太田は26日の密会後、党幹部らに「麻生には戦略がない。先送りは最悪の判断だ」と吐き捨てた。麻生も周囲に「(民主党代表)小沢一郎が望んでいる時期に選挙をするばかがどこにいるんだ」と指摘した。
与党が過半数を確保するには選挙態勢づくりでの緊密な連携が不可欠だ。しかし連立与党体制の空洞化は覆い隠せない。
▼揺らぎ
麻生は就任直後の9月下旬、周辺に「民主党は2008年度補正予算案に徹底抗戦するだろう。もう(早期解散の)腹は決まっている」と述べ「11月2日衆院選」を視野に、小沢民主党との決戦に挑む意向を漏らしていた。
だが同じ時期に自民党が独自に実施した選挙情勢調査では「苦戦必至」との予測がまとまり、雲行きが怪しくなる。米国発の金融危機は日本の実体経済にも影を落とし始め、麻生は早期解散圧力を避ける意味からも「景気対策優先」に傾斜していく。麻生は17日に党本部で選対幹部から「自民党候補の動きが鈍い。早期解散では責任を持てない」と伝えられ、決戦回避の意向を固めたとみられる。
27日夜、自民党で早期解散の旗を振ってきた幹事長細田博之、国対委員長大島理森と都内のホテルで会食。大島は「いま解散しないと、民主党が対決姿勢に転じて国会運営が大変なことになる。このままでは『追い込まれ解散』になる」と強調した。しかし麻生は動じなかった。「どんな困難があっても解散せずに、経済対策をやりたい」
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共同通信社が配信したこの記事に対し、自民党の大島理森国対委員長は29日、「該当する事実は認識されていない。間違いであることを認めた上で訂正と謝罪を求める」と、同社に文書で抗議した。時事通信によると、首相は記者団に「怒鳴り合ったり迫ったりという話は全く違う」と述べた。
もっとも、首相は会談そのものを否定していない。大島国対委員長の抗議も「怒鳴り合った」など会談のムードなどへの意味合いが強い。会談があったとされるのは日曜日。翌日の朝刊から「先送り論濃厚へ」に報道が一気に傾いたことを考えると、共同配信記事の趣旨の会談があったことは確実だろう。
興味深いのは、そもそも首相と公明首脳とのやりとりを誰が外部に明かしたか、という点。各メディアの報道によると会談当日、会談の情報を手に入れた記者たちがホテル内を探したが、警護の警察官すら見られなかったという。それほど機密性を高めた会談なのだから、その場にいた人間もきわめて限られる、と考えるのが妥当だ。
いったい誰が、何の目的で。これが分かると、政界の今後が見えてくるはずだ。
目を転じると、公明都議らによる融資口利きの疑惑がある新銀行東京を舞台に、詐欺事件がはじけた。現時点では容疑者のひとりである元行員が注目されているが、二課が狙うのはこんな小物ではあるまい。それこそ都議らの関与、というヤマを狙っているだろう。
「何か」に焦る公明。困った人の話を聞き手を差し伸べるためではなく、人の足元を見るためにしか姿勢と目線を下げることのない彼らにとっての「何か」とは、実体経済の悪化で疲弊する国民生活、などでは断じてない。