新聞協会賞候補出そろう
2006年度の新聞協会賞の候補作品(ニュースなどを作品と称するのは、違和感があるけれど)が、協会に加盟する新聞・通信・放送各社から出そろった。昨年に続き、懲りずに我流で受賞作を予想する。
ニュース(スクープ)部門は、北海道新聞社の「1971年の沖縄返還協定で『米との密約があった』ことを認める元外務省局長の新証言スクープ」。日本政府が情報公開せずに否定し続ける「密約」について、初めて日本側の当事者が負担を認める証言をした。日米関係の不公正さを象徴する出来事の事実を明かした華麗なスクープ。地方紙の存在感と実力も広めた。
次点は、毎日新聞社の「ファイル交換ソフト・ウィニーの暴露ウイルスによる情報流出の一連のスクープ」。身近で大きな話題であると同時に、「情報化」を進める政府と各省庁のお寒い実態が明らかになった一大現象。毎日は特にていねいに報道を続けた。
写真・映像部門は、時事通信社の「ライブドアの捜索から一週間後の堀江社長逮捕に至るまでの一連の写真報道」。裁判中の事案だが、2006年を象徴する出来事の一つ。輝きながらそびえ立つ六本木ヒルズと、整然と中に入る東京地検特捜部の列を足元から広角で撮影した写真は、全国紙にも掲載された秀作。大混乱の中でもニュース性と構図を冷静に判断した写真記者を心から評価する。のちの村上ファンド事件では、各社とも同様のアングルで撮影に挑んだ。
次点は、NHKの「火を噴く左翼エンジン~福岡発JALウェイズ DC-10型機 エンジントラブルの瞬間~」。決定的瞬間とは、まさにこのこと。運が良かっただけとも言えるが、運もまた報道マンの実力の一つなのだ。1985年に日航ジャンボ機墜落事故が起きた8月12日に大トラブルをとらえた映像は、空の安全の危うさを伝えた。ちなみに、NHKスペシャル「危機と闘う・テクノクライシス」制作の端緒にもなったのでは。
2作品が選ばれるとみられる企画部門は、1点目が読売新聞社の連載企画「検証・戦争責任」。日本人の手で「昭和戦争」の責任の所在を細かく検証した。戦後、ようやくこの時期を迎えた、と言えるのだろうか。東京裁判を否定する一方で戦争責任そのものを追及しようとしない歴史観の持ち主は、特に読むべし。
2点目は、下野新聞社の「知的障害者誤認逮捕問題のキャンペーン報道と連載企画『無実』」。誤認逮捕・起訴された知的障害の男性をめぐり、捜査や裁判のあり方を厳しく指弾した。報道が果たさなければならない、報道だからこそ果たせる役割を再確認させた。
次点は2つ。1点目は、読売新聞社の連載企画「風船新風景」。ヘリウムガスを入れた風船にデジタル一眼レフカメラを積む、という単純な仕組みだが、ヘリや航空機では撮影できない写真を続々紹介。空を舞うチョウはどんな風景を見るのか、チアリーディングを真上から見たら……写真部記者たちは思う存分楽しみながら、報道写真の世界と可能性を一気に広げてくれた。
2点目は、NHKの「白くまピース~誕生から6年間の物語~」。ほとんど前例がない人工飼育に挑んだ飼育員とシロクマとの交流などを生き生きと伝えた。ぬいぐるみのようだった子シロクマが見る見るうちにたくましく育つ姿に驚いた人も多いはず。6年間という長い期間、寄り添って記録し続けた記者やカメラマンが、報道に不足しがちな「継続」の大切さを教えてくれた。
日本経済新聞のスクープ「『昭和天皇、A級戦犯靖国合祀に不快感』を記した富田朝彦・元宮内庁長官の日記・手帳(富田メモ)に関する特報」についても触れる。
協会賞候補作では最も物議を醸した作品に違いない。受賞はないだろうが、個人的には天皇など皇室の「肉声」や「本音」が伝わることのない現状に強い疑問を持つきっかけになった。そういう「菊のカーテン」が、天皇発言の政治利用につながっているのだろうに。また、社会部記者が個人でこのスクープをものにしたとされることにも、やや驚いた。政治部や経済部マターではなかったということか。この記者の名は、報道の歴史だけでなく戦後史に刻まれた。
受賞作品は9月6日に決まる。新聞業界は、どんな作品を「顕著な功績があった」と判断するのか。
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