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2007.02.05

【書評】「公権力横領捜査官 中坊林太郎」

 漫画はあまり読まないが、その中でも傑作に位置しているのが「公権力横領捜査官 中坊林太郎」。「北斗の拳」などでおなじみの原哲夫さんの作品だ。

 舞台となる大手都銀「東西銀行」は、大蔵省(作品当時)と日銀のOBが経営を牛耳り、政治家や暴力団に数兆円規模のでたらめな融資を続けるなど、腐敗が深刻化している。そこに乗り込むのが、時限立法で内閣官房に発足した「公権力横領取締室」の特別捜査官、中坊林太郎。まるでケンシロウのような超人的強さ、行動力、大胆さを持ち、重要な情報を持つ行員らを仲間にしながら、私腹を肥やした代議士やヤクザ、銀行経営陣といった“悪党”を次々に成敗する。「松丸稲次郎・民自党元副総裁」「末野松不動産」など、特定の人物や組織を想起させる名前や外見も大きな魅力。

 経済小説の硬派なエッセンスを盛り込みながら、原漫画ならではのバトルたっぷりな痛快作品、というのが一見しての感想だ。
 けれども同時に、この作品は日本が持つ怖さと不甲斐なさを、こっそりと読者に突き付けている。

 公権力横領取締室を設置した「公権力横領罪法」は、「公務員、衆参両議院並びに地方議会議員が、その有する公権力を利用し、自己ないし特定の第三者の利益を図る目的で行った一切の行為はこれを公権力横領罪として処罰する」と定め、代議士らと共謀した民間人も共犯者として処罰する。違反すると、5年から無期懲役の実刑に加え、財産と公民権をはく奪される。
 さらに同室については、「強制捜査権並びに刑罰権の行使は、我が国における一切の公権力に優越する」と定めている。簡単にいえば、三権を度外視した超法規的存在で、憲法に違反している。
 時限立法とはいえ、なぜこんな法案を国会が成立させたか。ここが、この漫画の最大のポイントだ。

 同法は、米国などが作り、日本政府を脅迫して成立させたもの。作品冒頭では、サミットでのこんなやりとりがある。
 「200兆円を超える不良債権! 日本不況の悪影響がウォール街まで飛び火してきおったではないかっ! 無能無策のきさまらのおかげで世界経済がめちゃくちゃだ!」(ジョン・クリムトン米大統領。外見はまるで「北斗の拳」のラオウ)
 「なぜ日本は強権を発動して景気回復にあたらんのだ?」(ズール独首相)
 「政官財の癒着構造を解体し市場を我々に開放すれば事は簡単だろうに!」(シラルク仏大統領)
 日本の小橋徳三郎首相(ある歴代首相によく似ている)は拒絶するが、CIAがまとめた日本の政治家の不祥事リストを「法案制定に反対する議員はそれで辞職させろ」と突き付けられた上、可決できないと首相自身が海外に隠した財産を凍結すると脅され、諸外国の狙い通りになる。
 さらに、ネタバレになるが、東西銀行は中坊の活躍もあり、天下りの経営陣を一掃し裏社会との縁を絶つ。ずさんな経営実態が明らかになることで一時的に破たんの危機に陥るが、これまた中坊の活躍で、総資産世界トップの米国のメガバンクと対等合併することで、銀行は「再生」する。

 つまり、本当の主人公は米国を始めとする外国で、この作品は「外圧」を描いたものというほかない。痛快な活劇に目を奪われがちだが、よほどの外圧がなければ変われないニッポンを描き出しており、実は救いがない話でもある。

 最後に、いくつか気に入ったセリフを紹介。
 「こいつらを大人扱いしたのが間違いだった」(クリムトン米大統領が小橋首相に)
 「70億の追加融資の件? ああ あれねぇ 稟議がおりないんで融資なんてできねぇよ! 首吊って死ねボケ!」(中坊が、債権を回収したゴルフ場開発会社=実態は暴力団=に)
 「あの銀行の役目は終わったのです……潰してしまいなさい!」(松丸・元副総裁が東西銀行の今後について発言)
 「佐々木クン これはチャンスだよ 人間というのは2種類しかいない チャンスがチャンスだと気づく者と気づかない者だ 政治家への道は私がつけてやってもいい」(沢田幸四郎・民自党幹事長による番記者への言葉。裏金の疑惑がある大物代議士の会見で爆弾質問をするよう促したもの。世代交代を企んでいるところから、かつての小沢一郎氏がモデルでは)
 「不正は絶対に表に出させません そのための国有化です」(大蔵事務次官が、先輩にあたる東西銀行頭取に)
 「そして破綻した暁には……わしが記者会見で泣きじゃくり国民の前で謝罪するんだぁーーっ!!」(次期頭取として経営責任を押し付けられることになった東西銀行常務の嘆き)
 「東西銀行破綻のシナリオは民自党と大蔵省が決めたこと!お前たちは黙って決算を粉飾して時間を稼げばいいんだぁ!」(東西銀行頭取が次期経営陣らに)
 「こ これは全部 不良債権じゃないか!?」(失脚後の東西銀行頭取が、中坊から「退職金」として渡された10億8000万円分の目録を見て発言。かつて頭取自身が優良債権と判断していた)
 「見苦しい キミは死ぬまで病院で寝とれ」(松丸氏が、失脚後に救いを求めてきた東西銀行相談役に言い放った)

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コメント

はじめまして。Googleからここにきました。このコメントを一部引用させていただきますようお願いします。日本の金融機関の無能さは日興コーディアルグループに代表されるようにいい加減ですからね。

投稿: 小野 哲 | 2007.10.14 21:23

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